岐阜県美術館で好評開催中の前田青邨展 は、会期終了まであと1週間。後期展示で入れ替え作品の中でも「異例行列の信長」に注目が集まっています。これも6日に開かれた「信長まつり」効果?
当時若くして「うつけ」と呼ばれた信長が、岐阜の戦国武将・斎藤道三に面会する場面が描かれ、キムタクが岐阜で演じた凛々しくカッコいい信長役とも重なります。展示会の来館者は15,000人を突破しました。
◇「うつけ」の表情、凜々しく
織田信長、豊臣秀吉、徳川家康。この三人は「東海三英傑」と称される人気の高い戦国武将です。折しも「ぎふ信長まつり」騎馬武者行列で俳優の木村拓哉さんが信長役で練り歩くと聞いて岐阜市人口の2・5倍もの観覧申し込みがあったと話題沸騰しました。
木村さん扮(ふん)する信長はカッコよく凛々しく、勇ましく、大勢の観客を魅了しましたが、前田青邨84歳の名作「異装行列の信長」でも非常に凛々(りり)しい信長をご覧いただけます。
本作品の題材は、1549(天文18)年、美濃の斎藤道三が娘婿となる信長に木曽川左岸にあった正徳寺での面会を申し入れた際の逸話です。道三が隠れて様子を見ていると、「うつけ」と呼ばれたのも当然と思われるような風変わりな姿の信長が現れました。信長の家臣による史料『信長公記』によると、頭は茶筅髷(ちゃせんまげ)、太刀と脇差(わきざし)を藁縄(わらなわ)で巻き、腰に火打ち袋と瓢箪(ひょうたん)を七、八つぶらさげ、虎(とら)や豹(ひょう)の皮を交互にはぎ合わせた半袴(はんばかま)をはいていたそうです。
しかし、寺に到着すると速やかに装束を改め、長裃(ながかみしも)姿で威儀を正して道三の前に登場しました。これによって道三は信長の本質を見抜き認めたと伝わっています。
青邨はこの信長を狩装束(かりしょうぞく)として描きました。右手には鞢(ゆがけ)(皮の手袋)、左手には射籠手、腰には矢を入れた空穂(うつぼ)が提げられています。虎と豹の皮の逸話は行縢(むかばき)(狩猟の時に下半身を覆う二枚の毛皮)として採用しました。華やかな衣装の小姓たちが続き、その後ろに従う家臣は揃(そろ)いの朱色の装束です。黄色から赤系統でまとめられた色調が本作品をひときわ情熱的に見せています。
「岐阜県美術館開館40周年記念 前田青邨展 究極の白、天上の碧(あお)―近代日本画の到達点―」
主催 県美術館、岐阜新聞社、岐阜放送、前田青邨展実行委員会
場所 県美術館(岐阜市宇佐)
会期 11月13日まで
開館 午前10時~午後6時(入場は閉館30分前まで)
休館 月曜日(祝・休日の場合は翌平日)
お問合せ岐阜県美術館 岐阜市宇佐4-1-22 TEL.058 -271 -1313
岐阜新聞社事業戦略局 岐阜市今小町10 TEL.058-264-1159(平日9:00~17:00)