【NHK大河「光る君へ」が深く堪能できる一冊】『源氏物語の時代』『枕草子のたくらみ』など古典ベストセラーシリーズの著者による、待望の新刊『道長ものがたり』12月11日発売!
藤原道長は、一家の末っ子でした。元は最高権力者に就く立場になかった彼に訪れたのは〈幸ひ〉と呼ばれた天運――。兄たちを襲った立て続けの死や政治的ライバルの自滅があったからこそ掴んだ頂点の座だったのです。けれど、死者や敗者、つまり他人の不幸を踏み台に極めた栄華ゆえ、道長はしばしば怨霊に取り憑かれ、病に伏しました。読者は「怨霊」の存在に戸惑うかもしれませんが、著者は「それを非科学的と嗤っては道長の心を覗けない」と釘をさします。
では、はたして道長はどんな思いで生き、そして死んでいったのでしょうか。
道長といえば、研究者や古典ファンの間で、しばしば議論の的になるのが、紫式部との関係についてです――。はたして紫式部は道長と恋仲であり妾だったのでしょうか?
著者は紫式部自身が宮中で仕えていた頃に書いた道長との交流の場面と宮中から離れた後に書いた同じ場面の書きぶりの違いから、紫式部の心を浮き彫りにしていきます。その読み比べでは、紫式部のプライド、匂い立つような女心が垣間見られ、その分析から彼女の人間としての心の機微に触れることができて、読者として心楽しくなる瞬間です。
またもう一つ、道長の象徴とされる
「此の世をば 我が世とぞ思ふ 望月の 欠けたる事も 無しと思へば」
の歌は、その傲慢ぶりを示す一句として有名です。
ですが、本当にこの歌は現在周知されているような、道長が不遜な心から詠んだ一句だったのでしょうか。著者の山本淳子氏は異をとなえます。それでは真の解釈とは何だったのでしょうか? 本書ではその歌の背景をていねいにひもとき、著者が最新の研究によりあらたな解釈を提示して、刺激的です。
本書は総じて、道長自身の手による『御堂関白記』や同時代の貴族による『小右記』『権記』など一級史料のほか、『紫式部日記』『枕草子』など女房たちの実録、道長の死後に成立した『栄花物語』『大鏡』など歴史物語もひもときながら、一人の人間の心の〈ものがたり〉を照らしていきます。
冷徹で不遜なイメージの強い藤原道長の、政治史からは捉えられない、生活者としての新たな顔を知ることができる、平安王朝ファン、古典ファンにとっても新たな気づきに満ちた一冊です。
<もくじ>
第一章 超常的「幸ひ」の人・道長
第二章 道長は「棚から牡丹餅」か?
第三章 〈疫〉という僥倖
第四章 中関白家の自滅…
第五章 栄華と恐怖
第六章 怨霊あらわる
第七章 『源氏物語』登場
第八章 産声
第九章 紫式部「御堂関白道長の妾?」
第十章 主張する女たち
第十一章 最後の闘い
第十二章 「我が世の望月」
第十三章 雲隠れ
【平安文学研究者・山本淳子氏の古典ベストセラーシリーズ】
『源氏物語の時代 一条天皇と后たちのものがたり』(朝日選書)/定価:1430円(税込)
https://www.amazon.co.jp/dp/4022599200
『平安人の心で「源氏物語」を読む』(朝日選書)/定価:1650円(税込)
https://www.amazon.co.jp/dp/4022630191
『枕草子のたくらみ 「春はあけぼの」に秘められた思い』(朝日選書)/定価:1650円(税込)
https://www.amazon.co.jp/dp/4022630574
【最新刊案内】
朝日選書『道長ものがたり 「我が世の望月」とは何だったのか――』
著者:山本淳子
定価:1870円(本体1700円+税10%)
発売日:2023年12月11日(月曜日)
体裁:320ページ、四六判