2023年最も面白かったミステリーはこれだ! 『頬に哀しみを刻め』(S・A・コスビー/加賀山卓朗=訳)が『このミス』海外編1位にランクイン!!
北米ミステリー界の権威あるバリー賞・アンソニー賞・マカヴィティ賞を総なめにし、MWA(アメリカ探偵作家クラブ)賞長篇賞最終候補作にも選ばれた『頬に哀しみを刻め』の主人公は、息子たちの命を無惨にも奪われた2人の父親。行きずりの犯行か、ヘイトクライムか? 警察による捜査が一向に進まぬなか、水と油のような2人の父親たちは絶望の淵から真実を追い、血と暴力の復讐に突き進んでゆく。だがその先には、思いもかけない真犯人が……。正当派のノワール(暗黒小説)であると同時に、犯人(謎)を追うミステリーとしても第一級の本作ですが、なんといっても強烈な魅力を放つのが、アイクとバディ・リーという主人公の2人。
殺人罪で服役したあと更生し、今は庭園管理会社を営む寡黙な黒人アイクと、酒浸りでトレーラー暮らしの典型的レッドネックとして描かれる白人バディ・リー。息を吐くように差別的なことを口にするバディ・リーに辟易しながらも、同性結婚した息子に対し自分も偏見がなかったとは言えないことにアイクも向き合います。
互いに脛にキズを持つ「どうしようもない親父」であるアイクとバディ・リー、絶対に相容れなかったはずの2人が頬を切り裂くような哀しみを原動力に真実に迫ってゆく姿は読む者の胸に迫り、読後、誰かと語り合いたくなります。
【本書に寄せられた賛辞の一部】
「読者の鈍った心身を痛めつけ、頭蓋と魂を揺さぶる! S・A・コスビーの才能は、もはや疑いようがない!」
――小島秀夫(ゲームクリエイター)
「現代クライムサスペンスの最前線をゆく傑作だ」――吉野 仁(ミステリー評論家)
「僕らの生きるこの世の悲痛を描く、コスビーは詩人である」――霜月 蒼(ミステリー評論家)
「疾走する文章によって読む者の心をたまらなく震わせる物語である」――杉江松恋(書評家)
『このミス』に寄せたメッセージで、「江戸川乱歩や島田荘司といった偉大な作家たちの横に並ぶのは夢の実現」であると語り、日本文化への興味で読者を驚かせたS・A・コスビーは、米国南部ヴァージニア州出身。警備員や建設作業員、葬儀社のアシスタントなど様々な職を経て2019年にデビューを果たしました。今年6月に刊行した最新作All the Sinners Bleed が北米Amazonの2023ベストブックに選出されるなど、いま最も旬の作家の一人として全世界から注目を集めています。
【あらすじ】
殺人罪で服役した黒人のアイク。出所後庭師として地道に働き、小さな会社を経営する彼は、ある日警察から息子が殺害されたと告げられる。白人の夫とともに顔を撃ち抜かれたのだ。一向に捜査が進まぬなか、息子たちの墓が差別主義者によって破壊され、アイクは息子の夫の父親で酒浸りのバディ・リーと犯人捜しに乗り出す。息子を拒絶してきた父親2人が真相に近づくにつれ、血と暴力が増してゆき――。解説:宇田川拓也
【著者紹介】S・A・コスビー(S.A.Cosby)
米国ヴァージニア州出身。クリストファー・ニューポート大学で英文学を学んだのち、警備員、建設作業員、葬儀社のアシスタントなど様々な職業を経て作家に。2019 年に短篇“The Grass Beneath My Feet”でアンソニー賞最優秀短篇賞を受賞。『黒き荒野の果て』(原題:Blacktop Wasteland)と本書は2年連続でアンソニー賞、マカヴィティ賞、バリー賞を受賞するなど、非常に高い評価を得ている。
【訳者紹介】加賀山卓朗(かがやま-たくろう)
翻訳家。主な訳書にコスビー『黒き荒野の果て』、バーニー『11月に去りし者』(ともにハーパーBOOKS)、ル・カレ『シルバービュー荘にて』『スパイはいまも謀略の地に』、ルへイン『過ぎ去りし世界』『あなたを愛してから』(以上、早川書房)がある。
『頬に哀しみを刻め』
著者:S・A・コスビー
訳者:加賀山卓朗
定価:1320円(税込)
発売日:2023年2月20日
発行:株式会社ハーパーコリンズ・ジャパン
文庫版/ページ数:496