伊藤比呂美さんは自らの両親、子ども、夫との関係のみならず、人生相談も30年ちかく、生身の人の苦しみ、四苦八苦に向かい続けています。
詩人が暮しに結びついたお経……般若心経、法華経、阿弥陀経、一切精霊偈、発願文など、心惹かれたお経を長い時間をかけて、ひとつひとつ自分の言葉でとらえなおしてきました。柔らかく、強靭なことばのお経、お経についての身近な説明、明るいまなざしで自然を見つめ、「生きる」ことへの希望を持たせてくれるエッセイとともに。また詩人として鍛えてきたお経の朗読が9つCDに収録されていて、耳でも味わうことができます。
著者は仏教説話集に関心をもち、2004年には『日本ノ霊異(フシギ)ナ話』、2010年には『読み解き「般若心経」』(以上、朝日新聞出版)、『伊藤比呂美の歎異抄』、そして池澤夏樹=個人編集 日本文学全集(以上、河出書房新社)において、『日本霊異記』『発心集』『説教節』の古典新訳をてがけ定評を得てきました。
- 内容紹介
寝たきりの母、独居する父。死に方がわからないかのように、なすすべもなく空中に漂っている親を見ていて考えた。
「生きること死ぬこと」について、老い果てぬ前に準備をしたらいいのではないか。老いて死ぬ不安を、苦しみを、少しでも軽くする道はないか。
遠いカリフォルニアから通いつつ看取りをつづけるうちに、娘はたよりになるお経に出会った。
そして今、両親と夫の死を見届けて、
誰もいなくなった荒れ地や海辺を、犬と歩く。
日没を見て、月の出を見て、小さな生き物の生きざまを見る。
雨を見て、風を見て、地震を見る。
自然のめぐりと生きることと死ぬことが重なっていく。
- 「目次」から
父と母とお経とわたし/開経偈「今、出遭いました」/「三帰依文「仏教に出遭えたミラクル」/般若心経「完成に向かって」/源氏物語表白「紫式部の往生」/法華経薬草喩品偈「大きな木や小さな木」/阿弥陀経「浄土とはこんなところです」/法華経如来寿量品偈(自我偈) 「私が目ざめてからこのかた」/一切精霊偈「一切のたましいは」/発願文「ねがっています」/死んでいく人
- 著者プロフィール
伊藤比呂美(いとう・ひろみ)
1955年、東京都生まれ。詩人。80年代の女性詩ブームをリードし、結婚・出産を経て、97年に渡米した後、熊本に住む父と母の介護を続けていた。2018年より拠点を熊本に移し、2021年春まで、早稲田大学の教授を務める。
1999年『ラニーニャ』で野間文芸新人賞、2007年『とげ抜き 新巣鴨地蔵縁起』で萩原朔太郎賞、08年に同作で紫式部文学賞を受賞。15年早稲田大学坪内逍遥大賞、19年種田山頭火賞を受賞。
主な著書に『良いおっぱい悪いおっぱい「完全版」』、『閉経記』『読み解き「般若心経」』『道行きや』『ショローの女』ほか。
共著に『先生! どうやって死んだらいいですか?』(山折哲雄氏と)、『禅の教室』(藤田一照氏と)、『新版 死を想う われらも終には仏なり』(石牟礼道子氏と)、『先生、ちょっと人生相談いいですか?』(瀬戸内寂聴氏と)ほか多数。
『いつか死ぬ、それまで生きる わたしのお経』
著者:伊藤比呂美
定価:1980円(本体1800円+税10%)
発売日:2021年11月5日(金曜日)ISBN:9784022517869
四六判上製 272ページ
https://www.amazon.co.jp/dp/4022517867