これまでの感謝の思いを込めて、開場40周年にふさわしい特別な公演をお届けいたします。
国立能楽堂は、今年で開場40周年を迎えます。開場当初より名作はもちろん、新作・復曲作品等様々な作品を上演し、能・狂言の魅力を紹介してきました。令和5年9月~令和6年3月における「開場40周年記念」を冠した公演の中から注目の公演をご紹介します。
また、それに先駆けて開場40周年の第一弾である5月30日(火)特別企画公演では、ワキ方(主役を勤めるシテの相手役)に焦点をあてた特に珍しい作品を上演いたします。
そこで今回、特別企画公演で上演する能「檀風(だんぷう)」ゆかりの地(新潟県佐渡市)を巡り、ワキの帥(そつ)の阿闍梨を初演する宝生欣哉師より、作品のみどころやワキ方の役どころなどについてお話しいただきました。
◇注目作品
≪特別企画公演≫
ワキ方福王流の秘事で上演も稀な小書(特殊演出)での上演となる『源氏供養』、帥の阿闍梨が日野資朝の亡骸を弔う場面がワキ方の秘事として大切に伝承されている『檀風』。ワキ方に焦点を当てた名作を上演します。
◆ 5月30日(火)午後1時開演
能 源氏供養 舞入・語入 大槻文藏、福王和幸(観世流)
狂言 舟船 山本東次郎(大蔵流)
能 檀風 大坪喜美雄、宝生欣哉(宝生流)
≪開場40周年記念公演≫
天下泰平を寿ぐ「翁」で40周年記念公演の幕が厳かに開きます。能「清経」「山姥」は特色ある小書(特殊演出)での上演です。
◆ 9月6日(水)午後1時開演
翁 観世清和、野村萬斎(観世流)
能 清経 恋之音取 大槻文藏(観世流)
狂言 栗焼 野村万作(和泉流)
能 山姥 波濤ノ舞 金春安明(金春流)
9月開場40周年記念公演 翁・清経・栗焼・山姥 (https://www.ntj.jac.go.jp/schedule/nou/2023/9401.html)
重陽の節句に寄せて菊花咲き誇る「枕慈童」、『平家物語』を本説とする人気曲「船弁慶」など、秋の名作が並びます。
◆ 9月9日(土)午後1時開演
能 枕慈童 前後之習 金剛龍謹(金剛流)
狂言 月見座頭 大藏彌右衛門(大蔵流)
能 船弁慶 後之出留之伝・語入・名所教 宝生和英(宝生流)
9月開場40周年記念公演 枕慈童・月見座頭・船弁慶 (https://www.ntj.jac.go.jp/schedule/nou/2023/9-40.html)
喜多流でのみ演じられる「白田村」、上演機会の稀な一調一声など、名手たちによる至芸の様々をお楽しみいただきます。
◆ 9月15日(金)午後5時30分開演
一調一声 三井寺 梅若桜雪・大倉源次郎
狂言 萩大名 野村萬(和泉流)
能 白田村 友枝昭世(喜多流)
9月開場40周年記念公演 三井寺・萩大名・白田村 (https://www.ntj.jac.go.jp/schedule/nou/2023/9-401.html)
祝言の代表曲「末広かり」、祇園会が舞台の「鬮罪人」、勇壮な獅子舞が舞われる「獅子聟」。狂言方の重鎮による競演です。
◆ 9月22日(金)午後5時30分開演
◎狂言の会
狂言 末広かり 善竹十郎(大蔵流)
狂言 鬮罪人 三宅右近(和泉流)
狂言 獅子聟 山本東次郎(大蔵流)
9月開場40周年記念公演 狂言の会 末広かり・鬮罪人・獅子聟 (https://www.ntj.jac.go.jp/schedule/nou/2023/9-402.html)
芭蕉の精が世の無常を語る金春禅竹作の能「芭蕉」、豪快かつ爽快な敵討ちの能「望月」など、舞台は独特な緊張感で満たされます。
◆ 9月30日(土)午後1時開演
能 芭 蕉 観世恭秀(観世流)
狂言 文 蔵 茂山千五郎(大蔵流)
能 望 月 武田孝史(宝生流)
9月開場40周年記念公演 芭蕉・文蔵・望月 (https://www.ntj.jac.go.jp/schedule/nou/2023/9-403.html)
《特別企画公演》
世阿弥作の老女物で、秘曲として大切に扱われている能「檜垣」。東京での金剛流による上演は極めて稀です。
◆ 10月26日(木)午後1時開演
狂言 菊の花 野村萬(和泉流)
能 檜 垣 金剛永謹(金剛流)
10月特別企画公演 菊の花・檜垣 (https://www.ntj.jac.go.jp/schedule/nou/2023/10167.html)
百歳の小町が才知を見せる老女物の大曲「鸚鵡小町」。40周年記念公演の締めくくりにふさわしい舞台をご堪能ください。
◆ 3月20日(水・祝)午後1時開演
狂言 花 争 山本則俊(大蔵流)
能 鸚鵡小町 杖三段之舞 観世清和(観世流)
3月特別企画公演 花争・鸚鵡小町 (https://www.ntj.jac.go.jp/schedule/nou/2023/3186.html)
5月30日特別企画公演「檀風」出演・宝生欣哉、ゆかりの地をめぐる
妙宣寺・日野資朝の墓前にて
日野資朝が合祀されている大膳神社。佐渡に現存する最古の能舞台
Q.「檀風」のゆかりの地を巡ってみて、いかがでしたか?
A.昔は交通が今よりずっと不便ですから、都から佐渡へ流されるまでの時間、日野資朝(ツレ)はとても大変な思いをしただろうな、ですとか、資朝の子・梅若(子方)は処刑された父の仇討ちを果たせば二度と島から都へ戻ることができないと確信していたのだろうな、などといろいろなことを思い浮かべながら、ゆかりの地を巡りました。資朝や梅若など、作品に登場する人物が、ここ佐渡で今も大切にされているのもとても素敵だと感じました。
こうして実際に作品の舞台になった場所を訪れてから演じるのと、そうでないのとは全然違うと思います。舞台でも、観る人に阿闍梨の覚悟などが伝わればいいなと思っています。
Q.「檀風」はワキ方で大事にされてきた曲とうかがいました。
A.この曲は、ワキ方がシテ方よりも舞台の上で様々なことを進めていくので、大事にしてきたのだと思います。
年代ごとに勤める大事な曲があります。40代の時に「檀風」への出演を依頼されても、受けなかったかもしれません。今50代のタイミングで国立能楽堂から声がかかり、チャレンジしてみようと思いました。
Q.お客様から見て感じられるであろう「檀風」の魅力とは?
A.シテが出てくるまで(前半部分)は、現代劇のようで流れがわかりやすく、わりと見やすいと思います。そして後半は、急に海上の場面になります。阿闍梨の祈りにより熊野権現が出現するあたりは想像力を働かせてご覧になっていただければと思います。
前半も、ただの親の敵討ちの話ではないですね。梅若は父・資朝にただ会いに行きたかった。それが、図らずも敵討ちを果たそうと気持ちに変化が生まれ、血生臭い話になったのではないでしょうか。
Q.帥の阿闍梨は、梅若を守らなくては、と思って祈ったのでしょうか。
A.最後はそうですね。守ると心に決めたからにはこの子(梅若)を都に返さなくては、と強い思いを持っていたでしょうね。
祈りの場面は、基本的な動きが書かれたものしか残されていないので、自分で作り上げることになると思います。
Q.「檀風」のようにワキが中心となる作品の時は、普段と違う心持ちになりますか?
A.心持ちは、それぞれの曲によって変わるものだと思います。
自分の役がどこからどこへ行くのかを想像しながら、名ノリをしたり、道行をすることで、シテをうまく導けるようなことになればいいなと思います。
Q.「檀風」のワキの役は今回が初めてですが、いつかはやってみたいという思いがありましたか?
A. これまでは、子方や後見の出演でした。自分の年齢とか、声をかけてもらったタイミングなどの巡り合わせで、今回勤めてみようと思いました。何回も演じられるものではないので、ワキ方としての節目になりますし、心してかかりたいと思います。
◎公演・チケット情報
5月国立能楽堂開場40周年記念 特別企画公演 源氏供養・舟船・檀風 (https://www.ntj.jac.go.jp/schedule/nou/2023/5401.html)
(完売御礼)
国立劇場チケットセンター(午前10時~午後6時)
0570-07-9900/03-3230-3000(一部IP電話等)
インターネット購入
https://ticket.ntj.jac.go.jp/
◇国立能楽堂について
国立能楽堂は、能楽の保存と普及を図ることを目的として昭和58年9月に開場しました。
初心者でも鑑賞しやすい上演形式と多角的な公演内容により、広く一般に能楽を楽しんでいただく機会を提供しています。
所在地:東京都渋谷区千駄ヶ谷4-18-1